糖尿病性腎症の食事療養のポイント
- 糖尿病性腎症とは?
- 糖尿病性腎症とは糖尿病の合併症の1つで細小血管に起こる疾患です。腎臓機能が徐々に低下してやがて腎不全になります。日本では患者数の40%を糖尿病性腎症の患者が占めており、透析導入の原疾患の第一位になっています。
糖尿病性腎症に関する検査値
血糖値 | グリコアルプミン(GA) | 尿糖 | |||
---|---|---|---|---|---|
基準値:70〜110mg/dl(空腹時) | 基準値:12.4〜16.3% | 基準値:‐ | |||
グリコヘモグロビン(HbA1c) | 1.5-アンヒドログルシトール(1.5-AG) | ||||
基準値:4.3〜5.8% | 基準値:14〜40µg/ml |
正常値 | 糖尿病型 | |
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空腹時血糖値 | 110未満 | 126以上 |
75gOGTT ※2時間値 | 140未満 | 200以上 |
随時血糖値 | 200以上 |
※ブドウ糖負荷試験のこと。糖尿病が疑われる人に75gのブドウ糖を飲んでもらい、その後の血糖の変動から糖尿病かどうか確定診断するための試験。
指標 | 優 | 良 | 可 | 不可 | |
---|---|---|---|---|---|
HbA1c(%) | 5.8未満 | 5.8〜6.5未満 | 不十分 | 不良 | 8.0以上 |
6.5〜7.0未満 | 7.0〜8.0未満 | ||||
6.5〜8.0未満 | |||||
空腹時血糖値 (mg/dl) |
80〜110未満 | 110〜130未満 | 130〜160未満 | 160以上 | |
食後2時間血糖値 (mg/dl) |
80〜140未満 | 140〜180未満 | 180〜220未満 | 220以上 |
(日本糖尿病学会編:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン15頁、南江堂2004より)
※HbA1cとはブドウ糖と結びついたヘモグロビン(血色素)で、現時点より過去1〜1.5ヶ月間の平均血糖値を反映します。
糸球体濾過量(GFR) | 尿素窒素(BUN) |
---|---|
基準値:60mL/min/1.73m2以上 | 基準値:8〜20mg/dl |
クレアチニン(Cr) | クレアチニンクリアランス(Ccr) |
基準値:男0.7〜1.1mg/dl、女0.5〜0.8mg/dl | 基準値:男110±20ml/min、女100±20ml/min |
尿蛋白 | 尿酸(UA) |
基準値:定性一、定量40〜80mg/日 | 基準値:7.0mg/dl未満 |
カリウム(K) | リン(P) |
基準値:5mEq/L以下 | 基準値:4mg/dl以下 |
食事療養の基本
病期 | 総エネルギー (kcal/kg※1/日) |
蛋白質 (g/kg※1/日) |
食塩 (g/日) |
カリウム (g/日) |
備考 |
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第1期 (腎症前期) |
25〜30 | 制限せず※2 | 制限せず | ※3 | |
第2期 (早期腎症) |
25〜30 | 1.0〜1.2 | 制限せず※2 | 制限せず | |
第3期-A (顕性腎症前期) |
25〜30 | 0.8〜1.0 | 7〜8 | 制限せず | |
第3期-B (顕性腎症後期) |
30〜35 | 0.8〜1.0 | 7〜8 | 軽度制限 | ※4 |
第4期 (腎不全期) |
30〜35 | 0.6〜0.8 | 5〜7 | 1.5 | |
第5期 (透析療法期) |
維持透析患者の食事療法の準ずる |
※1標準体重
※2高血圧合併例では7〜8g/日以下に制限する。
※3糖尿病食を基準とし、血糖コントロールに努める。蛋白質の過剰摂取は好ましくない。
※4浮腫の程度、心不全の有無から水分を適宜制限する。
- 顕性腎症前期までは血糖コントロールのためエネルギーを制限する。
顕性腎症後期以降は、腎機能や血圧コントロールを重視するため、エネルギー制限は緩和する。たんぱく質を制限するため、エネルギーをとるために糖質や脂質の割合を多くする。- 主食を増やす。
- 砂糖はインスリンの必要が増すため、はるさめ、マロニー、くず粉などのでんぷん製品を利用するようにする。
- 特別用途食品を利用する。
- 低たんぱくご飯、低たんぱくパン、でんぷんもちなどを利用する。
- 腎機能障害の程度に応じ、たんぱく質を制限する。
- 加工品は避け、卵、肉、魚などの良質のたんぱく質をとる。
- 主菜は通常1人分(70〜80g程度)の1/2〜2/3量を目安にし、一品だけに肉や魚を利用する。
- 病状に合わせて食塩を制限する。→高血圧の食事療養のポイント参照
- 病状に合わせてカリウムを制限する。→腎臓病の食事療養のポイント参照
- むくみ、心不全があれば水分を制限する。
- 引用・参考文献一覧
- 日本腎臓学会:CKD 診療ガイド,2009
- 日本腎臓学会:慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版,2007
- 山本みどりほか:臨床栄養ディクショナリー,メディカ出版,2002
- 玉川和子ほか:臨床栄養学実習書,医歯薬出版,2000
- 中村丁次:栄養食事療法必携,医歯薬出版,2000
- 足立香代子:検査値に基づいた栄養アセスメントとケアプランの実際,チーム医療,2006
- 科学技術庁資源調査会編:五訂日本食品標準成分表,2000