透析治療中の方の食事療養のポイント
- 人工透析療法とは?
- 人工透析療法は、腎不全の末期で腎機能が障害され、尿毒症や心不全などの循環器症状、倦怠感などの神経症状、吐き気や嘔吐などの消化器症状があらわれた場合に開始します。
- 透析には血液透析と腹膜透析があります。血液透析は人工の半透膜であるダイアライザーという機械に血液を通し尿毒物質の除去、電解質の補正、代謝性アシドーシスの是正を行い血液を浄化する療法で、浄化した血液は体内に戻します。治療の維持には通常1回4時間、週3回の通院が必要です。
- 腹膜透析は腹腔内に滅菌した透析液を注入し、半透膜である腹膜を通して尿毒物質の除去、電解質の補正、代謝性アシドーシスの是正を行う療法です。治療の維持には通常1,500〜2,000mLの透析液を定期的に交換する必要があります。
食事療養の基本
透析療法(ステージ5D)における食事療法の基準
エネルギー (kcal/kg/日) |
蛋白質 (g/kg/日) |
食塩 (g/日) |
水分 (mL/日) |
カリウム (mg/日) |
リン (mg/日) |
---|---|---|---|---|---|
27〜39※1 | 1.0〜1.2 | 6未満 | できるだけ少なく (15mL/kgDW/日以下) |
2,000以下 | 蛋白質(g) ×15以下 |
注)kg:身長(m)2×22として算出した標準体重、
kgDW:ドライウェイト(透析時基本体重)
※1厚生労働省策定の日本人の食事摂取基準(2005年版)と同一とする。性別、年齢、身体活動レベルにより推定エネルギー必要量は異なる。
エネルギー (kcal/kg/日) |
蛋白質 (g/kg/日) |
食塩 (g/日) |
水分 (mL/日) |
カリウム (mg/日) |
リン (mg/日) |
---|---|---|---|---|---|
27〜39※1 | 1.1〜1.3 | 尿量(L)×5 + PD除水(L)×7.5 |
尿量 + 除水量 |
制限なし※2 | 蛋白質(g) ×15以下 |
注)kg:身長(m)2×22として算出した標準体重、PD:腹膜透析
※1厚生労働省策定の日本人の食事摂取基準(2005年版)と同一とする。性別、年齢、身体活動レベルにより推定エネルギー必要量は異なる。透析液からの吸収エネルギー分を差し引く。
※2高カリウム血症では血液透析と同様に制限。
- たんぱく質は良質なものを適切量とる。
- 1食のうち、たんぱく質を多く含む食品を50〜70g程度利用する。肉や魚なら70g(1切れ程度)、卵約50g(1個)、豆腐100g(1/3)丁などを利用する。
- ごはん中心、おかず小量型の食生活をしない。
- エネルギーを十分とる。
- ご飯などの主食となる食品を一定量とる。
- 油を上手に利用する。(揚げ物、炒め物、マヨネーズ、ドレッシングなど)
- 食欲不振時は、おやつを利用する。
- 食塩を制限する。→高血圧の食事療養のポイントを参照
- 水分を制限する。
- 飲み物はお茶、水、氷、ジュース、コーヒー、酒類などで、うがいも含む。(氷一個…20〜30ml、うがい一回…約10ml)一回の飲み物の量を計る。
- 湯のみ茶碗を小さくする。
- 熱いおいしいお茶を少量飲む。
- 水分の多い料理や間食(鍋、シチュー、お粥、プリン、ゼリーなど)を食べる時は飲み物を控える。
- 調理方法を工夫する。(揚げ物や焼き物を取り入れて水分を減らす。)
- カリウムを制限する。→腎臓病の食事療養のポイント参照
- リンを制限する。
- 牛乳・ヨーグルトなどの乳製品はリンが高いので控える。
- しらす干し・ししゃも・うなぎ・あなご・はもなどの骨ごと食べる魚は控える。
- 加工食品の摂取を控える。食品添加物としてリン酸塩が使われているので、ハム・ソーセイジ・かまぼこ・練り製品・インスタント食品は控える。
- タンパク質(卵・魚・大豆製品)はリンを多く含んでいるので、食べ過ぎないようにする。
- 引用・参考文献一覧
- 日本腎臓学会:CKD 診療ガイド,2009
- 日本腎臓学会:慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版,2007
- 山本みどりほか:臨床栄養ディクショナリー,メディカ出版,2002
- 玉川和子ほか:臨床栄養学実習書,医歯薬出版,2000
- 中村丁次:栄養食事療法必携,医歯薬出版,2000
- 足立香代子:検査値に基づいた栄養アセスメントとケアプランの実際,チーム医療,2006
- 科学技術庁資源調査会編:五訂日本食品標準成分表,2000