腎臓病の食事療養のポイント
- 急性腎炎症候群とは?
- 急性腎炎症候群とは、扁桃腺、咽頭炎などにかかった後に、溶血性連鎖球菌感染により、腎臓の糸球体内に比較的急な経過で炎症が発症し、血尿・蛋白尿とともに、浮腫、欠尿、高血圧、糸球体濾過値の減少が見られます。
- 持続性蛋白尿・血尿症候群とは?
- 蛋白尿、血尿、あるいはそのどちらともの症状が持続的に見られるものの、浮腫や高血圧などの症状や腎機能低下が見られない場合を指します。IgA腎症、ループル腎炎などがあります。
- 慢性腎炎症候群とは?
- 蛋白尿や血尿が持続的に見られ、経過とともに浮腫、高血圧などの症状や脂質異常症が見られます。
- ネフローゼ症候群とは?
- 大量の蛋白尿と低蛋白血症(低アルブミン血症)に、浮腫や脂質異常症が見られます。
- 急性進行性腎炎症候群とは?
- 急激に比較的短期間(数週間から数ヶ月)の間に腎機能障害が進行し、蛋白尿や血尿のほか、尿沈渣が見られ、倦怠感とともに高血圧、貧血、高窒素血症などが見られます。
- 慢性腎臓病(CKD)とは?
- 腎機能を示すGFR(糸球体濾過量)の低下が3ヶ月以上続いているか、もしくは腎障害を示す症状(蛋白尿など)や所見(画像、血液、病理)が3ヶ月以上持続する、またはその両方が3ヶ月以上持続するすべての疾患・病態を指します。
- GFR(糸球体濾過量)はeGFR(推算GFR)で示されることもあり、60mL/min/1.73m2以下で慢性腎臓病と診断されます。
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CKDのステージ分類 ステージ(病期) 重症度の説明 進行度による分類
GFR
mL/min/1.73m2ハイリスク期 ≧90(CKDの危険因子を有する状態で) 1 腎障害は存在するが、GFRは正常または亢進 ≧90 2 腎障害が存在し、GFR軽度低下 60〜89 3 GFR中等度低下 30〜59 4 GFR高度低下 15〜29 5 腎不全 5D・5T <15 ※透析患者(血液透析、腹膜透析)の場合にはD、移植患者の場合にはTをつける。
腎機能に関する検査値
糸球体濾過量(GFR) | 尿素窒素(BUN) |
---|---|
基準値:60mL/min/1.73m2以上 | 基準値:8〜20mg/dl |
クレアチニン(Cr) | クレアチニンクリアランス(Ccr) |
基準値:男0.7〜1.1mg/dl、女0.5〜0.8mg/dl | 基準値:男110±20ml/min、女100±20ml/min |
尿蛋白 | 尿酸(UA) |
基準値:定性一、定量40〜80mg/日 | 基準値:7.0mg/dl未満 |
カリウム(K) | リン(P) |
基準値:5mEq/L以下 | 基準値:4mg/dl以下 |
食事療養の基本
ステージ(病期) | エネルギー※1 (kcal/kg/日) |
蛋白質 (g/kg/日) |
食塩 (g/日) |
カリウム (mg/日) |
---|---|---|---|---|
ステージ1 (GFR≧90) | ||||
尿蛋白量0.5g/日未満※2 | 27〜39 | 任意 | 10未満※3 | |
尿蛋白量0.5g/日以上 | 27〜39 | 0.8〜1.0 | 6未満 | |
ステージ2 (GFR60〜89) | ||||
尿蛋白量0.5g/日未満※2 | 27〜39 | 任意 | 10未満※3 | |
尿蛋白量0.5g/日以上 | 27〜39 | 0.8〜1.0 | 6未満 | |
ステージ3 (GFR30〜59) | ||||
尿蛋白量0.5g/日未満※2 | 27〜39 | 0.8〜1.0 | 3以上6未満 | 2,000以下 |
尿蛋白量0.5g/日以上 | 27〜39 | 0.6〜0.8 | 3以上6未満 | 2,000以下 |
ステージ4 (GFR15〜29) | 27〜39 | 0.6〜0.8 | 3以上6未満 | 1,500以下 |
ステージ5 (GFR<15) | 27〜39 | 0.6〜0.8※4 | 3以上6未満 | 1,500以下 |
ステージ5D (透析療法中) | 透析治療中の方の食事療養のポイント参照 |
注)kg:身長(m)2×22として算出した標準体重、
GFR:糸球体濾過量(mL/min/1.73m2)
※1厚生労働省策定の日本人の食事摂取基準(2005年版)と同一とする。性別、年齢、身体活動レベルにより推定エネルギー必要量は異なる。
※2蓄尿できない場合は、随時尿での尿蛋白/クレアチニン比0.5。
※3高血圧の場合は6未満。
※40.5g/kg/日以下の超低蛋白食が透析導入の遅延に有効との報告もある。
- たんぱく質の量は腎機能に合わせて制限する。
- たんぱく質は卵や肉、魚類などの良質のたんぱく質を必要なたんぱく質量の1/2を目安にとる。
- 主菜は通常(70〜80g)の1/3〜1/2にする。
- ブロッコリー、豆もやし、たけのこなどのたんぱく質の多い野菜は控える。
- たんぱく質を体内で効率的に利用するために十分なエネルギーをとる。
- マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、植物油などの油脂類を上手く使用する。
- はるさめ、マロニーなどのでんぷん食品をサラダや酢の物に利用する。
- 食塩を制限する。→高血圧の食事療養のポイント参照
- 減塩調理法を工夫する。
- 水分は病状に合わせて制限する。
- 汁物、スープ類は避け、鍋物、お粥、雑炊は控える。
- 果物、豆腐、アルコールなどの水分の多い食品は控える。
- 血清カリウム値が高い場合は制限する。
- コーヒー、紅茶は1日1杯程度にし、お茶類はうすめのものにする。
- わかめ、昆布などの海藻類は控える。
- 豆類は控える。
- 生の果物は控える。(バナナ、メロン、アボガドなど)
- 野菜は水にさらすか、茹でこぼす。
- 芋類、野菜はたっぷりの水で茹で、茹で汁は捨てる。
- サラダにする野菜は細かく千切りにし、流水に30分〜1時間つける。
- 引用・参考文献一覧
- 日本腎臓学会:CKD 診療ガイド,2009
- 日本腎臓学会:慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版,2007
- 山本みどりほか:臨床栄養ディクショナリー,メディカ出版,2002
- 玉川和子ほか:臨床栄養学実習書,医歯薬出版,2000
- 中村丁次:栄養食事療法必携,医歯薬出版,2000
- 足立香代子:検査値に基づいた栄養アセスメントとケアプランの実際,チーム医療,2006
- 科学技術庁資源調査会編:五訂日本食品標準成分表,2000